2012年11月11日日曜日

体験>情報:ハーマンミラーポスター展『Then × Ten』

アクシスギャラリーで開催された「ハーマンミラーポスター展『Then x Ten』」を観てきました。

『Then × Ten』というタイトルは、チャールズ&レイ・イームズアレキサンダー・ジラードなどが制作した過去のポスター10点(Then)と、現代のクリエイターが制作したポスター10点(Ten)を意味しています。展示はそれら新旧デザインのポスターと、そのモチーフとなった『アーロンチェアー』『イームズシェルチェア』『イームズラウンジチェア』などが併せて設置してあるという形式です。いずれもプロダクトデザイン史に残るハーマンミラー社の名作ですね。

新・旧のポスターの比較と、ポスターとそのモチーフになった実物の椅子の比較が出来る意味は、展示会を見学から体験のレベルまで、一気に引き上げてしまう工夫とも言えるでしょう。“体験>情報” という現代のマーケティング理論や時代の風潮にもマッチしていると思います。実際、会場では椅子に座る事も撮影も許可されていて、主催者側の自信と制作物の良さを知ってもらうために重ねた “誠実な試行錯誤” を感じました。

『ネルソンマシュマロソファ』田名網敬一
手前のポスターは『ネルソンマシュマロソファ』をモチーフにした田名網敬一さんの作品(2012年)。

『アーロンチェア』カム・タン
『アーロンチェア』と、それをモチーフに制作されたカム・タンのポスター(2012年)。

『テキスタイル&オブジェクト』アレキサンダー・ジラード
奥の壁のポスターは、アレキサンダー・ジラード『テキスタイル&オブジェクト』(1961年)。

『ネルソンココナッツチェア』ジョナサン・ザワダ
『ネルソンココナッツチェア』背面と、それをモチーフに制作されたジョナサン・ザワダのポスター(2012年)。

『イームズプライウッドチェア』エダ・アカルタン
今回私が一番惹かれたポスターは、エダ・アカルタンによる『イームズプライウッドチェア』(2012年)でした。この一枚のポスターで、「プライウッドチェア」の作者であるイームズ夫妻の暮らし、ロサンゼルスにある『イームズ邸』の様子、それらにまつわる色遣いなど、見事に表現されているのです。また、家・オフィス・学校など「どのような環境にも合う家具を作る」という、イームズ夫妻の信念までもが盛り込まれた作品になっていました。

旧作のポスターは有名な作品が多いので知っているものが多かったのですが、新作は未見のものばかりでしたので、それぞれイマジネーションの広がり方が大変に刺激的でした。モチーフとなった実物の椅子は答え合わせのためではなく、イメージソースに触れるためですね。アップルやハーマンミラーといった、会社がデザインを重視するのは売るためだけではなく問題解決のためであり、ユーザーに至上の体験を提供するためです。会場展示を公園の遊具で遊ぶように楽しみながら、デザインのストイックな一面を再確認した大変意味深い体験となりました。

※『Then x Ten』展は、11/7日に終了しました。