2013年9月24日火曜日

『Bing』の新ブランドデザイン +「フラットデザイン」は必然。


新しい「Bing」のブランドデザイン
The Bing JP Blog / Bing日本版公式ブログ

「Microsoft」の検索サービス、『Bing』ブランドデザインがリニューアルされました。そのデザインの過程が記された「Bing日本版公式ブログ」の記事が、興味深い内容となっていたので、メモを兼ねてのまとめです。


 ●『Bing』の使命
  • 「検索がもたらす価値とは何か?」「ユーザーが必要としている事柄は何か」を明確にし、その事柄についての洞察を含んだ情報を届ける。
  • ユーザーが必要とすることを、必要とする方法で提供する。
  • 『Bing』は、開発当初から、「検索を通じてユーザーに目的を成し遂げる力を与える」ことを使命と考え、進化を遂げている。
  • 「単に検索する」という考え方をやめて、「行動につながる洞察を発見する」という考えにシフトする。
  • 「知識によって人々に力を与える」ことを使命と考える。
  • 「深い洞察を持つ、価値の高い情報をユーザーに届ける」ことを使命と考えて製品開発を行い、毎日使う製品に検索を組み込むことで、「最高のエクスペリエンスを届ける」

 ●進化したアイデンティティ
  • 製品に「アイデンティティ」を表現し、製品と共に成長するデザインに仕上げるために、製品グラフィックUX(ユーザー・エクスペリエンス)のデザイナーたちと議論を重ねる。
  • 『Bing』が、従来の検索ページという枠を越えて進化していることを考慮し、製品のロードマップと整合性のとれた「ブランドビジョン」を再設計する。

 ●新しいロゴの開発
  • 「今までのロゴの問題点」を分析し、新しい「Microsoft」のアイデンティティも考慮した上で、モーションフォントカラーサイズフォームを何百通りも検討・検証を行う。
  • ワードマークは、「Microsoft」のコーポレート フォント『Segoe』をカスタマイズしたものを使用する。
  • カラーは、従来の『Bing』のロゴにあったオレンジ色のドットを残し、「Microsoft」のコーポレートロゴカラーパレットを取り入れる。
  • 「Microsoft」のデザインは、原則として、グリッド・レイアウトを採用しているため、新しい『Bing』のロゴをグリッドに重ね合わせると、レイアウトに揃い、一貫性のある角度・視線・バランスを保っている

 ●新しい検索ページ
  • 新しいロゴが完成した後、検索ページのデザインと共にUX(ユーザー・エクスペリエンス)の改良も実施。
  • タイポグラフィーは、「Microsoft」のアイデンティティとの一貫性、および、読みやすさと明瞭さの点より、『Segoe』を基本とする。
  • 新しい『Bing』ブランド・アイデンティティでは、10の際立つ色調を中心とした「Microsoft」のコア・カラーパレットを採用する。
  • 『Bing』では、主にオレンジと黄色、パレットの暖色に重点を置く。
  • 最も重要視するカラーは「Orange 124」で、明瞭、自信、温かさを連想させるこの基本パレットを選択する。
  • モーショングラフィック要素も開発し、『Bing』のシンボルを、光とインスピレーションのプリズムとしてデザインした、「サーチライトグラフィック」を考案する。

 ●未来のためのシステム
  • 新しい『Bing』アイデンティティは、使命と製品との親和性を維持しつつ、『Bing』を戦略的、かつ、視覚的に進化させることを可能にするブランド・アーキテクチャのシステムである。
  • 『Bing』は、単にWeb 上で青いリンクをたどってデータを提供するのではなく、「ユーザーの意思決定をサポートする明確な洞察を提供」する。
  • ユーザーが必要としているのは、情報に基づいて行動を起こし、「最終的に目的を成し遂げること」だと考える。
  • 「検索する」から「行動につながる洞察を発見する」にシフトする。
 ※以上、要約。


『Bing』と新しいロゴについて

『Bing』の新しいロゴは、今までの青を基調とした丸みを帯びたデザインから、シンプルかつ現実的で、直接的なデザインに生まれ変わりました。このように、デザインに込められた意図を知る事によって、「Microsoft」への理解も深まります。
ここ10年あまり、「Apple」や「Google」が注目を集めていますが、「Microsoft」『Bing』が、今後どのような戦略や動きをとっていくのか、注目していこうと思いました。

『フラットデザイン』について

『iOS7』をはじめ、「フラットデザイン」が注目されています。ここに来て、「Apple」「Microsoft」「Google」「YAHOO!」各社一斉にロゴUI(ユーザー・インターフェイス)をフラットデザインに切り替えました。その理由として「Apple」のジョナサン・アイヴは、「ユーザーが直感を必要とする操作に慣れたため、細部まで実物に近づけたデザイン(スキューモーフィック)である必要がなくなった」と述べています。

最初に「フラットデザイン」を目にした時には、チープに感じられるかもしれません。しかし、最低限必要な要素を明解に反映させたデザインは、次第に洗練されたものとして映るようになるでしょう。一見、デザインが簡単なものになったように感じるかもしれませんが、広く一般に浸透して使われる日常的なデザインは、交通標識等の例を挙げるまでもなく、特別なものであってはならないと思います。(装飾ではなく、デザインなので)
ここに来て「スキューモーフィック」から「フラット」への転換が図られた。それは一般に広く認知されたという事であり、そういった意味では「フラットデザイン」の採用は、ひとつの到達点と言えるのです。

デザインに限らず、表現はシンプルです。しかし、それはデザイナーだけの常識かも知れません。だから私は、物事をよりシンプルに表現し、伝えるための「フラットデザイン」が今後完全に定着していくのか、定着するのにどれだけの時間を要するのかを注視していきたいと思います。

「Bing」の特設のWebサイト。『Bing - The new Bing』
「Bing」の特設のWebサイト。『Bing - The new Bing』


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2013年9月4日水曜日

『アンドレアス・グルスキー展』:多様性の中で際立つ微妙な違い。それがグルスキーを特別な存在にしている。

『アンドレアス・グルスキー』展のポスターデザイン
国立新美術館で『アンドレアス・グルスキーを観てきました。アンドレアス・グルスキーはドイツの現代写真を代表する写真家で、世界中に多くのファンがいます。最近では、サザビーズでのオークション落札金額(約3億2,300万円)が話題になりました。写真に限らず、絵画や映画というものは、いくら印刷物やネットで作品を見ても、体感を得る事は出来ません。作品とは「情報として掴むのではなく、その作品を通じて体感を得なければならないもの」です。

グルスキーの写真は手前のものやメインのモチーフを際立たせるのではなく、大きなものから極小のものまですべてのものを均等に扱っています。より具体的に言うと、画面のすべてにピントがあっている状態です。写真や映画では「パン・フォーカス」と呼ばれるオーソドックスな手法ですが、実際にグルスキー自らが厳選した65点を観た時、今までに見たことのない独特の新たな視覚世界が広がっていました。

グルスキーの作品を観ると、まず日常において、ヒトの目はすべてを見ているわけではない、ということを強烈に感じます。観たいものだけを観て、聞きたいものだけを聞いているという事です。これは本能のようなものかもしれません。それ故に、すべてにピントが合っていることで逆に不安定な感覚をもたらし、時に不快さを伴うこともあったのでしょう。それでも作品に強く惹き付けられるのは、未だかつて見たことのない視覚世界を体感できるからです。

離れて観たり近づいて観たり、時にはかなり大きな作品でありながら細部までよく見えるため、つい近づきすぎてしまうのですが、そういった不安定さを掻き立てる効果を知っての事か、作品前の一定のラインを超えると音が出るようになっていました。

展覧会のキャッチコピーに「これは写真か?世界が認めたアーティスト、日本初の個展」とありますが、確かにこれは従来の写真の枠を超えたものであると考えます。大半のものは具象でしたが、時に抽象的な表現もあり、かなり加工されているため、純粋に写真としてではなく、絵画的に感じられる表現もある。抽象と具象、遠近の距離感といった相反する要素が混じり合う、斬新な表現であると感じました。勿論、そこには格段に進化した現代の写真加工技術が介在しているのですが、その使い方には独特のセンスがあり、それ故にグルスキーは「現代写真を代表する写真家」と呼ばれているのだと思います。

写真の加工や補正にも現在は豊富なバリエーションがあり、日常でそういった作品や印刷物、製品などに触れる機会も増えています。手近なところで言えば無数にリリースされているiPhoneなどの写真アプリのバリエーションに代表されますが、そのような写真を見慣れた今だからこそ、グルスキーの写真を体験するというのは、有意義な体験となります。一見無秩序にすら思える写真加工技術の大海にあって、確かに他とは違う際立った何か、センスや技術を体感すること。その他大勢とグルスキーの間にある圧倒的に見えて、非常に微妙な差異、それこそがグルスキーであり、その差異が彼を「現代写真を代表する写真家」にしているのです。

アンドレアス・グルスキー展の『カミオカンデ』
撮影可能エリアに展示された『カミオカンデ』。

『アンドレアス・グルスキー展』は、
東京展 : 2013年 7/3 ~ 9/16日(国立新美術館)
大阪展 : 2014年 2/1 ~ 5/11日(国立国際美術館)
で開催されています。

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