2017年10月28日土曜日

『ダンケルク』:考え抜かれた映画のデザイン


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クリストファー・ノーラン監督最新作『ダンケルク』を観てきました。
『ダンケルク』は現存するフランスの地名であり、本作は実話をベースに作られています。
映画のストーリー構成はシンプルな三本のショートストーリーが一本の映画にまとめられたもの、となっていましたが、史実としての「ダンケルクの戦い」は、1940年のナチスドイツ軍によるフランス侵攻の際、ダンケルクに駐在していた40万人のイギリス軍とフランス軍の救出作戦として、広く知られています。

主な舞台は美しい港町(ダンケルク)、一般市民の暮らす市街地や海水浴を楽しむビーチなどで、日常にある風景の中で戦闘が行われます。
この映画は追体験する手法がとられています。
具体的にはカメラが常に登場人物の目線にあるため、絶えず主人公など、登場人物の目線で戦場が描かれます。
つまり、観客に戦場にいるような臨場感を与えることを狙っているのですが、これは舞台設定が戦争映画にありがちな、砂漠やジャングルではなく、ダンケルクという実存する港町が舞台である事を踏まえてのことでしょう。
作中、一般人の暮らす市街地が戦闘が行われる舞台となっているので、日常風景の中を飛ぶ戦闘機や、買い物に使う路地に現れる軍隊の姿が現実味を感じさせ、戦場を日常感覚で理解させようとしているような印象を受けました。

特筆すべきポイントは戦争映画でありながら、台詞がほとんどなく、残酷な描写もないことです。
戦争映画と一口で言っても、扱われる主題は多種多様です。
「ダンケルク」もまた作品の中心には主題があり、その主題を伝える手法としてサスペンス映画の手法を採用しています。
そして一般的な戦争映画のシズル感となっている残酷描写や戦闘のカタルシスにあえて、重点を置いていません。
こういうインパクトを無駄なものとして丁寧に削り落としたのは、例えばショッキングな残酷描写や大きなカタルシスを得られるような爆発などばかりが印象に残る作風にしてしまうと、主題が置いてけぼりにされてしまうからでしょう。

以上のように、戦争映画というジャンルで括ってしまうと「ダンケルク」はかなり斬新な手法が採用された作品となりますが、この手法はデザインの世界では王道と言える仕事の仕方、つまり普遍的な仕事の仕方と言えましょう。
クリストファー・ノーランが評価されるポイントとしてよく挙げられるのは優れた脚本です。
脚本のクオリティーにも色々な評価基準がありますが、クリストファー・ノーランの脚本が評価されるポイントとして指摘されるのは、高い文学性です。
わかりやすくここでは「クリストファー・ノーラン作品の脚本の評価軸としての高い文学性」を「斬新で本質的な主題と、伝える力と読解力」と仮定しますと、デザインもまたクライアントの要望を正確に汲み取る読解力を必要とします。
クライアントの要望を聞き(読解力)、抽象的な概念(主題)を具体的な形に落とし込む作業(伝える力)をしてゆく、ということですね。

つまるところ表現の役割とは「受け手の感情を揺さぶること」です。
マーケティングでいうシズル感も広義ではロジックで説得するのではなく、「顧客の感情を動かすこと」を目的としています。
そう考えると伝える手法として、「観客を戦場に送り込み、戦場体験をさせる」という方法を採用したことには非常に重要な意味があると感じます。
主人公の目を通して戦場を観ること、クリストファー・ノーランが今、この題材を選んだこと。
これらもまた観客の感情を動かすために打たれた、その時に考えうる最良の一手だったというのは言うまでもありません。
過去に『地獄の黙示録』、『プラトーン』、『プライベート・ライアン』など、今までにも様々な戦争映画を観てきましたが、
センセーショナルなシーンがなくとも、このように感情を揺さぶる表現もあるのかと感嘆しました。
クリストファー・ノーランが技術的にもトップクラスにある監督であることに疑いの余地はありませんが、何よりすごいのはこのように徹底的に考え抜いて仕事をするという姿勢です。

トップクリエイター、ヒットメーカーの仕事に触れることは本当に大切ですね。



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2017年1月1日日曜日

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2017年 DESIGN+SLIM 年賀状

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本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます☆

平成29年 元旦




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