2016年5月27日金曜日

『DTPの勉強会 第21回』はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門:大切な意思統一。大局的な視座から作業工程を把握する。

『DTPの勉強会 第21回』に参加してきました。
今回のテーマは「はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門」です。

★はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門
☆スピーカー
【RIP解説】
 ・森脇 恵さん(研友社印刷株式会社・CTP業務課)
  枚葉オフセットメインの印刷会社にてRIP周りの業務を担当。
  Apogee Prepressを運用中。
【データ作成】
 ・尾花 暁さん(あかつき
  出版系のデザイン・DTPをメインとするデザイナー。
  「+DESIGNING」でDTPに関する執筆を担当。
【PDF入稿】
 ・笹川 純一さん(株式会社吉田印刷所
  2000年から印刷通販を始めた時の立ち上げスタッフ。
  入稿データの編集とRIPを担当(当時)。
  DTPサポート情報」というサイトにて情報を発信。

「はじめての」と銘打たれた今回のテーマではありますが、初心者向けというより一歩踏み込んだ印象です。
当日は「データ作成入門」として、以下の3点について「出力側」と「制作者」それぞれの立場から詳細を伺いました。
・RIPで何が行なわれているか
印刷に適した望ましいデータとは?
印刷用のPDFの作り方

最初の森脇さんのセッション「RIP解説編」では、主に出力(RIP)についての説明がありました。
RIPとは「Raster Image Processor」の略称で、分版と網点生成を行う装置です。
必要項目を入力してRIPする実際の業務の手順を、会場から会社のPCに接続して公開して頂きました。これは印刷会社勤務の方以外は、なかなか見る機会がない貴重なデモです。
このような行程への理解が深まると、入稿されたデータを確実に出力するために配慮すべきことに目端がきくようになるかもしれません。

尾花さんのセッション「データ作成編」では、入稿用のデータ制作に関するポイントの説明がありました。
データ制作者が目指すべきは「RIPで出力できるデータ」、つまり「制作者が意図した通りに分版できるデータ」です。
言い換えると、制作行程を通じての「データ制作者」の役割は「データ上で分版指定を行う」ということになります。
「データは分版指定」という視座に立って、「分版プレビュー」「オーバープリントプレビュー」などについて果たすべき仕事を明確にしていく。その説明は興味深いものでした。
また、「PDF互換ファイルを作成」にチェックを入れる、「パッケージ」機能を使う、「プリフライト」の設定カスタマイズなど、データの不備を未然に防ぐための機能の紹介もありました。
それでも、印刷会社ごとに環境が異なるため、「必ず出力できるデータ」そいうのは存在しないそうです。よって「出力できる」というのは、「制作側の出力意図と製版側の出力能力の間で、コンセンサスがとれていること」が重要となります。

笹川さんのセッション「PDF入稿編」では、PDFの種類、正しい変換方法、チェック方法などについて説明がありました。
日本国内では現時点で「PDF/X-1a」「PDF/X-4」が主に使われていて、とりわけ「PDF/X-4」は多く用いられているようです。(出力側が対応しているなら、まず「PDF/X-4」を選ぶといいそうです。)
ただし「PDF/X-1a」と「PDF/X-4」変換の初期設定には問題があり、 そのまま書き出すと印刷事故につながるので注意が必要だそうです。そこで「PDF変換」「Acrobatの出力プレビュー」「Acrobatのプリフライト」などのデモもありました。
万が一、データに不備があった場合は制作者側に戻り、データを修正してから再度PDFに書き出して入稿することになります。そのような無駄を防ぎ、確実なPDF変換設定を用意するためには、やはり入稿予定の印刷会社から「PDF変換設定ファイル(PDFプリセット)」をいただくのが最良のようです。


出力の手引き 2016.1 | Adobe Creative Station
データ制作やPDF入稿の解説が掲載されている『PDF&出力の手引き』を、ダウンロードすることができるサイトです。「出力のためのデータ管理」「安全に出力するための最終確認」「ファイル書き出しとプリント」と大きく3つに分類され、それぞれの詳細を見ることができます。

出力の手引きWeb|株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ
株式会社SCREENのサイトでも「PDF変換設定ファイル」が用意されています。「EQUIOS印刷ユーティリティ」からダウンロードできます。

PDF変換設定について | 印刷データ作成ガイド - 相談できる印刷通販トクプレ.
今回登壇された笹川さんが立ち上げに関わられた印刷通販サイト「トクプレ」は、入稿に関する詳細がわかりやすく解説されている優れたサイトです。私も今までに利用したことがありますが、このサイトで設定方法を確認するだけで、問題なくPDF入稿での印刷ができました。厳密にこだわるなら本紙校正は外せませんが、納期やコストが優先される場合に印刷通販は便利です。


今回は「コンセンサス」という言葉が繰り返し出てきました。これはクライアント、データ制作者、印刷会社など、全体に関わることですが、とりわけ、データ制作者と印刷会社では、これにかかっていると言っても過言ではないでしょう。最終的な入稿形態や方法は「印刷会社への確認」に尽きると思いますが、
・従来通り、ネイティブデータで入稿
・ギリギリまで修正が入る場合を考慮し、ネイティブデータで入稿
・印刷にかかる時間と予算を削減するためにPDFデータで入稿
・データに不備があった場合の対処法として、
 念のためネイティブデータとPDFデータ両方を入稿
などの選択肢を準備できる事が望ましいでしょう。

私も以前、イベントで使用するパンフレットを制作した際に、ギリギリまで原稿が入らずイベント開催日までの日数がわずかになってしまったことがありました。その時にはPDF入稿で印刷の工程を削減することによって、納期に間に合わせることができました。
PDF入稿はデータ制作者側の負担も大きいですが、制作者側の選択肢が広がったとも考えられます。そして上手く使えば、多少無理なお客様のご要望にも応えられる可能性もあります。今後もその都度最良の方法を選択していけるように、データ制作にまつわる知識や入稿方法など、定期的にチェックしていきたいものです。



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DTPの勉強会【DTPの勉強会第21回】(2016年5月21日開催)

前回参加した『DTPの勉強会』の記事はこちら

以前参加した『INDD 2012 Tokyo』PDF出力の記事はこちら