2013年1月22日火曜日

『田中一光とデザインの前後左右』:「スタンダードでありながら新しい」がこれからの指標?!

田中一光とデザインの前後左右
「21_21 DESIGN SIGHT」で開催された『田中一光とデザインの前後左右』を観てきました。

「デザインが本当に生活に浸透すると無記名になる」 。
『田中一光とデザインの前後左右』を観てそんなことを思いました。グラフィックデザイナーやデザインに興味がある人であれば、田中一光という名前を知らない人はほとんどいないでしょう。一般の人でも田中さんのデザインを至る所で目にしているはずです。会場で膨大なデザインの数々を前にして、田中さんのデザインが日本のデザイン史に残された多大な業績の重みを深く感じ入りました。

私が最初に田中さんのデザインに触れたのは、写植メーカーであった「モリサワ」のアートディレクションでした。中でも『たて組ヨコ組』は毎号クオリティ高く、デザイナーになる前から今日まで多大な影響を受けています。『たて組ヨコ組』は1972年から同社のPR誌として配布されていたもので、右ページからは「たて組」に、左ページからは「ヨコ組」に美しく文字組版がされていて、優れたデザインが多数掲載された冊子です。今回の展覧会のタイトルやパンフレットの構成にもそれが取り入れられているのは、田中さんの仕事を知り尽くした、小池一子さん(本展ディレクター)と廣村正彰さん(本展会場構成・グラフィックデザイン)ならでは、ですね。

『田中一光とデザインの前後左右』21_21 DESIGN SIGHT

今回の展覧会で一番印象に残ったのは「ライフスタイルの基盤」という展示です。グラフィックデザインの仕事は今までにも多数拝見していますので、田中さんがデザイナーとしての社会・文化・生活にまつわる活動をより深く知ることはとても意味のあることでした。

・1980年に発売された「無印良品」のベースとなる
 生活者の思想を意識したコンセプト作り。
「TOTOギャラリー・間」「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」
 などのデザイナーが発表できる場づくり。
「東京デザイナーズスペース」
 「日本グラフィックデザイナー協会」などの立ち上げ。
・企業とデザイナー、社会とデザイナーという
 双方向から考えられたCI制作。
中川ケミカル「カッティングシート」大日本インキ化学工業
 「DICカラーガイド」特種東海製紙「ファンシーペーパー」
 などの用紙やインキの開発。
・自らデザインされた明朝体、モリサワ「光朝」の制作。

こうして見てみると、デザインに必要な環境を整えてきたことなど、日本のデザイン業界にどれほど貢献されてきたのかということがよく分かります。田中さんは「デザインの三大要素は紙と色と文字」とおっしゃっていたそうですが、その大切な要素の整備には目を見張るものがありました。そしてそれらの要素を最大限に活かし完成されたデザインは、美しく斬新な表現で以前から非常に感銘を受けていたものです。

また「生活のすべてがデザインなんだよ」とのお言葉通り、日々の暮らしをとても大切にされていたことが、あちこちから見て取れました。とりわけ料理に関しては田中さん自ら腕を振るうこともあり、デザインと重ねて語られることが多かったようです。素材の選び方、調理のタイミング、器の選択と盛りつけを、デザインに置き換えて作品を観てみると、なるほどしっくりと当てはまります。「生活のすべてがデザイン」ということも、改めて実感する機会でもありました。

と、まあここまで書いてきましたが、田中一光さんについて書くのは正直難しいです。
有名すぎてスタンダードに、つまり標準となってしまったものの特殊性(Unique Sales Point)やコア・コンピタンスを改めて抜き出すのはとても難しい。今更、ビートルズの凄さについて書くようなものですから。作家の村上龍さんがジョルジオ・アルマーニさんに「スタンダードでありながらも新しいものを作っていく、というのはすべての作り手の夢だと思うのですが、貴方の周辺にはどのようなスタッフがいらっしゃるのですか?」と質問をして喜ばれていたのですが(『対談集 世界を僕らの遊び場に』村上龍 著)、「スタンダードでありながら新しいものを作っていく」は、これからの時代の新たな指標になるかもしれません。

廣村正彰さんの作品『His Colors』
「色彩の絶対音感を持つ」といわれた田中さんが選定した「カッティングシート」と「ファンシーペーパー(TANT)」を用いて制作された廣村正彰さんの作品『His Colors』。(デザイン:廣村正彰 協力:株式会社中川ケミカル「CS100」・株式会社竹尾「タント」)

※『田中一光とデザインの前後左右』は、
  1月20日(日)に終了しました。

前回の田中一光さんについての記事はこちら

───────────────────

2013年1月1日火曜日

2013年を迎えて

NEW YEAR 2013

新年あけましておめでとうございます。
旧年中はお世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新しい年が良い一年でありますように、
皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます☆

2013年 元旦


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー