2012年3月24日土曜日

『ロトチェンコ 彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児』展について。


gggで開催されている『ロトチェンコ 彗星のごとく、
ロシア・アヴァンギャルドの寵児』展を観てきました。

アレクサンドル・ロトチェンコは、
ロシア構成主義の創始者の一人であり、
ロシア・アヴァンギャルド芸術家の中でも際立った存在です。

彼の活動は、絵画、グラフィック、写真だけではなく、
立体、建築、インテリア、家具など、広範囲に及びました。

1922年からは、グラフィックに傾注し、
未来派の代表的詩人、ウラジーミル・マヤコフスキーと共に
50点程のポスター、100点程の看板や広告塔、その他雑誌、
新聞、パッケージ、広告などをデザインしています。

そして1924年からは本格的に写真表現を模索し、
「遠近短縮法」「上から下へ」「下から上へ」と言われる
極端な視点からの撮影など、多くの実験を繰り返しました。

私がロトチェンコに惹かれるのは、多くの作品はもちろん、
その活動のどれもが実験精神に溢れ、挑戦の連続だったことと
制作方法に、グラフィックの原点を見ることができるからです。

その中でも、構成主義のグラフィックデザインの特徴のひとつ
「フォトモンタージュ」は、それまでのデザインのやり方に
大きな変革をもたらし、大きく前進しました。

「グリッド・レイアウト」を用いた彼のコンポジションは、
構成の幾何学的図式とレイアウトに従い考え抜かれたもので、
今でも廃れていない技法のひとつです。

ポスターなどでは、マヤコフスキーの強烈なコピーが加わり、
広告を見た人に衝撃を与え、記憶に残すことにも成功しました。

この年代のポスターは手描きで、随所に苦心の跡が見られます。
今ではコンピュータとソフトで簡単に制作できそうなものでも、
それには到底かなわない何かを感じることもできました。

 
今回の展覧会の展示内容に加えて、
副監修の矢萩喜從郎さんによる会場構成やポスター、
カタログなどの一連のデザインも非常に優れたものでした。

●展示会場の様子は、こちらのサイトにあります。
 【ggg】ロトチェンコ展会場写真アップしました。

●ギャラリートークのアーカイブはこちらです。
 USTREAM: gggロトチェンコ展 ギャラリートーク矢萩喜從郎

『ロトチェンコ 彗星のごとく、
ロシア・アヴァンギャルドの寵児』展は、3/27日に終了しました。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー

2012年3月3日土曜日

心が躍る世界へ:『ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ』展を鑑賞。


原美術館で開催されている
『ジャン=ミシェル オトニエル:
 マイ ウェイ』展を観てきました。

フランスを代表する現代美術作家
オトニエルの個展は、日本では今回が初めてで、
パリ→ソウル→東京→ニューヨークと巡回しています。
最初のパリでは、20万人もの人が訪れました。

展示作品のいくつかをネットで見ていましたが、
実際に目にすると印象はまるで異なりました。
観る場所や角度、自然光の入り方によって、
様々な質感や色彩、フォルムに変化するのです。

これは会場に行かなければ
体感することができない展覧会です。

実物の作品が持つ圧倒的な存在感と輝き、
そして美しさに、とにかく魅了されました!!!
刺激を受け、心が躍る展覧会は久しぶりの体験です。

初期の、布、硫黄、樹脂などを使った作品から
最新のムラーノガラスを使った作品まで
彼が歩んだ25年の奇跡を感じることもできました。

オトニエルの作品には
生と死、自由と苦悩、美と官能など、
様々な概念があるそうです。

初期の作品では、心の傷や苦悩を現す
エモーショナルな作品を制作していました。
そして90年代半ばのガラスとの出会いで、
夢や幸福感など、新たな世界へと広がっていきます。

また、この会場が今回の展示にぴったりで、
午後の光が差し込む館内とそれを映す作品は、
とても幻想的なスペースになっていました。

会場は、多少の注意書きはあるものの
撮影OKなので、わたしも撮影してみました。

 
左:「マイ ウェイ(My Way)」2010年
   ムラーノガラス、アルミニウム留具
右:「グローリー ホールズ(Glory Holes)」
   1995年 布に刺繍

 
「私のベッド(Mon Lit)」2002年
 ムラーノガラス、アルミニウム、飾りひも、フェルト

 
左:「自立する大きな結び目
  (Le Grand Nœud Autoporté)」2011年 ガラス、金属
右:「黒い心、赤い涙(Black Heart, Red Tears)」
   2007年 ビーズ、ガラス

 
屋外にも作品が展示されています。

 
「涙(Lagrimas)」2002年 ガラス、水、テーブル

 
「ラカンの大きな結び目(La Grand Double
 Nœud de Lacan)」2011年 鏡面ガラス、金属


こちらは美術館併設のカフェ
(カフェ ダール)にある「イメージケーキ」。
ハラミュージアム アーク(群馬県渋川市)の作品
「Kokoro」がモチーフなのかと思われます。

心が躍る展覧会『ジャン=ミシェル オトニエル:
マイ ウェイ』展は、3月11日(日)まで。
Hara Museum Web