2015年6月2日火曜日

『スイスデザイン展』:デザインが機能するために、社会とデザインの関係について考えてみる。


スイスデザイン・展覧会・ポスター

117日から329日まで、東京オペラシティアートギャラリーで開催されていた『スイスデザイン展』に行ってきました。
展覧会からしばらく経ちましたが、鑑賞中や会期後に考えた事等のメモです。

スイスデザイン展・会場

私は「スイスデザイン」に注目していたので、今までにも竹尾ポスターコレクションや多摩美術大学の展覧会など、多数観てきました。グラフィックデザインとタイポグラフィーにおける「スイススタイル」のクオリティーには目を見張るものがあります。大胆な構成や配色等、いつ観ても新たな視座をもたらしてくれるため、私は「スイススタイル」をことあるごとに見直してきたような気がします。

現在のデザインにも多大な影響を与えた「スイスデザイン」の重要度を鑑みると、今までこういった展覧会がなかったことが不思議ですが、例えば20年前と比較しても昨今、デザインの有用性に対する理解は深まっていると感じます。
そういった社会変化も背景にあるのかもしれませんが、ようやくグラフィックのみならずプロダクト、ファッション、インダストリアル、建築等、多領域を横断する形で展覧会が催されたのは実に有意義なことだと思います。
また、今回の展覧会は日本とスイスの国交樹立150年に合わせての開催となっており、日本とスイスの関わりや共通点なども紹介されている、大変興味深いものです。
今までグラフィックデザインを主に観ていましたが、改めて「スイスデザイン」の全体像を俯瞰できたこと、そして日本との関わりを知ることで、「スイスデザイン」という概念の輪郭を取れた事は大きな収穫でした。

スイスクロスをモチーフにしたUSMハラー
『スイスクロスをモチーフにしたUSMハラー』
USMモジュラーファニチャー
2014年 スチール USMモジュラーファニチャー 蔵

この展覧会で印象に残ったのは、会場に多数展示されていた「スイスクロス」(国旗)の扱い方です。
スイスを代表する企業「スイスエア」のイメージはまさにその典型で、国旗を使ったロゴや機体など、ブランディングデザインとしても優れたものだと言えます。また「スイスクロス」のデザインをはじめ、パスポートや紙幣などのスイスという国を象徴するデザインは、デザインと国民のアイデンティティが分かちがたい関係であることの証明のようにも思えます。つまり、スイスブランドが確固たるものになっているのだと感じました。

スイスクロスは交通機関や企業だけでなく、販売用の製品などにも実に幅広く使用されています。そのどれもが素晴らしいもので、デザインモチーフとしてのスイス国旗、その先にある国と個人の在り方について、色々と考えさせられました。
例えば、スイス(スイス国旗)は購入したり身に着けたりするのに「恥ずかしいもの」ではなく、「恥ずかしいもの」ではないのはそこで暮らす人々が個人として積極的に共同体に関わっているから、でしょう。
その辺りの意識の在り方についてより掘り下げるには歴史に学ぶ必要がありますが、「スイスクロス」がスイス社会で広く使われている理由と、そのような国で生まれて、育まれた「スイスデザイン」という概念について深く知ることは有意義なことだと思います。
何故なら、私達の暮らす実社会の中でデザインの果たすべき仕事について考え続ける事を止めてしてしまうと、デザインそれ自体が「いらないもの」になってしまうからです。

ヒトが二人以上いれば共同体である、と仮定してみましょう。
その共同体の中で色々なものが古くなって消えていったり、新しいものが生まれてくるのだとします。
スイスデザインが何年も前の製品でもただ単に古いといった印象を受けないのは、生まれては消えていく有象無象の類のものではなく、そのような新陳代謝が行われる器となっている共同体そのものと密接に関係するものだから、かもしれません。

どのような背景で
 このような優れたデザインの数々が生まれたのか」

長年にわたり世界中でリスペクトされ続けてきた「スイスデザイン」に触れたことは、「社会」の中で「デザイン」がどのようにあるべきか、について多くを考えさせてくれるきっかけになりました。

スイスデザイン・展覧会・図録
今回の展覧会図録は、資料としても大変貴重なものです。


スイスデザイン・型紙インスタレーション
『ルツェルン応用化学芸術大学による型紙インスタレーションプロジェクト』。 発案はハンスユルグ・ブーフマイヤー教授で、同研究室は日本の「型紙」に着目しています。日本の型紙に発想を得た全く新しい装飾的意匠で、フレキシブルに使用できるオブジェとして、産学協同で完成されました。



グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM

グラフィックデザインのご依頼・お問い合わせ




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2015年1月1日木曜日

2015年を迎えて

2015年 DESIGN+SLIM 年賀状

I wish you a Happy New Year.

2015

あけましておめでとうございます!
昨年はお世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします☆

平成27年 元旦




グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM

2014年4月26日土曜日

ビジュアルベースコミュニケーションとしてのツール「Pinterest」:『Pinterest デザインミートアップ』に参加しました。


ピンタレスト・イベント『Pinterest デザインミートアップ』

4月24日に「クリエイティブスペースamu」で開催された、「Pinterest」のイベント『Pinterest デザインミートアップ』に参加してきました。

今回は、ピンタレスト・ジャパン株式会社・代表取締役社長の定国直樹さん、コミュニティマネジャーの山口結花さん、デザイン会社(コンセント)のデザイナー4名が登壇されました。

「Pinterest」は招待制の時から使っていて、今も変わらず愛用しているツールです。アメリカでは女性の5人に1人が使っているそうですが、日本では一般に公開されてからもあまり普及していないようです。日本語版の運用を開始したのが昨年の11月12日なので、いよいよこれからという感じでしょうか。

まず最初にお話があったのは、「Pinterest」は写真共有サービスではないという事でした。そして構造は「Facebook」のようなソーシャルグラフでもなく、「Twitter」のような「インタレストグラフ」になっているそうです。現状の有名サービスでは、「Tumblr」や「Instagram」に比較的近いのかもしれません。

「Pinterest」のミッションは、「世界最大のインタレストグラフを形成する」というものだそうです。そのため、リアルの友人・知人とつながるのではなく、興味の対象や価値観の一致するボードをフォローし、インスピレーションを得るという形になっていて、その形こそが「Pinterest」最大の魅力であると感じます。

実際の使い方としては、「発見から実現へ」と、漠然としたアイディアや構想を具体的にまとめていくのにも役立つことがわかりました。プライベートでは、ベランダのガーデニングやウェディングパーティ等、ビジネスではプロジェクトのイメージ共有等の事例が紹介され、様々な使い方の可能性が感じられます。

Pinterest ・UI・UX・デザイン
「Pinterest」の UI/UX デザイン

あまり知られていない魅力的な使い方は「検索」です。同じ単語で検索しても、Googleの画像検索が玉石混淆なのに対し、「Pinterest」の画像はすでに選ばれたものが表示されるので、クオリティの高い写真を一覧することができます。そしてその中から気に入った画像をひとつのボードにまとめることもできますので、ビジュアルベースコミュニケーションには最適なツールともいえます。

以前、アメリカ本国の「Pinterest」の成功は、アメリカの女性ユーザーがショッピングに使った事が大きいという記事をを読んだ事がありましたが、自分が「Pinterest」経由で買い物する事はあり得ないと思っていました。しかし、この検索のクオリティを目の当たりにすると、アメリカ女性の気持ちが少なからず理解できるような気がします。

現在アメリカでは、購買につながるトラフィックとしては、1位が「Facebook」、2位が「Pinterest」、3位が「Twitter」だそうですが、購入額平均では、「Facebook」の70ドルに対し、「Pinterest」は、170ドルだそうです。2倍以上の購入額平均をマークする理由には、商品が魅力的に見えるサイトデザインとUI/UX(ユーザー・インターフェース/ユーザー・エクスペリエンス)によるところが大きいのではないかと思います。

ただ、「Pinterest」としては、ECに特化するつもりはなく、ユーザーの方には様々な使い方を楽しんでいただきたいそうです。ショッピングなどのビジネス面だけでなく、ひとりひとりが魅力的なボードを形成する事が、「Pinterest」の魅力を高める事につながるからでしょう。

逆に言うと、日本ではその部分がハードルになっているようです。登録すれば楽しめるものではなく、自分でボードを作って育てていかないといけないわけですから。そこを超えると「Pinterest」の魅力を感じる事ができるのですが、何が面白いのか分からなく、止めてしまう人が多いようで非常に残念に思います。

ビジネスでの優れた使い方としては、アメリカのデパートでのバッグのプロモーションが紹介されました。「なぜこのバッグがこの形でこの色になるのか」、バッグそのものだけではなく、インスピレーションを与えるもの、同一カラーのもの、そのバッグがある風景、美しくスタイリングされた写真等が並んでいます。このような魅せ方は、「Pinterest」の得意とするところでしょう。

私はグラフィックデザイナーという仕事柄、「Pinterest」ではデザインのボードを多数作っていますが、様々な国のデザイナーのボードを見るのも多くの発見があります。「Pinterest」を好きな理由のひとつに、「世界中でフラットにつながっていることを感じられる」というのがあります。言葉が通じなくても、1枚の魅力的なビジュアルでつながることは、想像以上に楽しいものでした。そしてまだまだ「Pinterest」には可能性を感じているので、今後も期待しています。


●私の「Pinterest」アカウントはこちらです。
 ※母の日のボードは、今回のイベントで使用した「共有ボード」です。


Pinterest ・バッグ・Tシャツ・ステッカー・デザイン
イベントでいただいた、バッグ・Tシャツ・ステッカー2種。



グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM





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2014年3月24日月曜日

ローリング・ストーンズのシンボルマークとツアーパンフレットデザイン:『ベロ・マーク』のバリエーションから読むトップランナーとしての意志


ローリング・ストーンズ『14 ON FIRE ジャパンツアー』
2月26日(水)、3月4日(火)、3月6日(木)の3日間、東京ドームで8年ぶり6回目となる「ザ・ローリング・ストーンズ」のジャパン・ツアーが行われました。


●エンターテインメント業界に於ける
 ローリング・ストーンズのツアーの位置づけ

ローリング・ストーンズのツアーは、エンターテインメントの世界では『特別なもの』と言っても過言ではありません。
イベント・興行の規模としては、W杯やオリンピックに匹敵する規模となっており、関わるスタッフも世界中から選りすぐられた超一流の人材です。
つまり、ストーンズのツアーは未だクリエイティブのトップを走る表現に触れる事の出来る希少な機会と言えます。
私は最終日3月6日の公演に行ってきましたが、開演前から会場周辺は異常な期待感に包まれており、「確かにこれは『特別』なイベントなのだ」という印象を強くしました。

以下、今回のツアーパンフレットを見て気づいた点等、シンボルマークのデザインと今までのパンフレットデザインの比較をメモしておきます。


●ローリング・ストーンズのベロ・マーク。
 そのデザインについて

ストーンズのパンフレットやグッズには、あの有名な「ベロ・マーク」を使用したものが多数あります。あのマークは当時学生だった「ジョン・パッシェ(John Pasche)」によるデザインで、1971年のアルバム『Sticky Fingers』がリリースされた時に作られました。
・「シンプルである」
・「テーマに合っている」
・「時代を超えて通用する」
・「目に留まりやすい」
・「記憶に残りやすい」
・「応用がきく」
等、シンボルマークにとって重要な要素が押さえられたものになっており、43年経った今でも使用され続けています。

ストーンズは息の長いバンドなので、アルバムやツアーのコンセプトに合わせて「ベロ・マーク」にも多数のバリエーションが見られます。それらバリエーションがアルバムやツアーのビジュアルに加え、様々なグッズやライブ中のヴィジュアル・エフェクトにも使用されるのですから、バリエーションは多岐に渡っています。
また、近年、そのブランド・エクイティ(ブランドが持つ様々な無形的な資産価値)が更に高まっているように思われます。実際、ストーンズの使用したプロモーション手法やデザインは数限りなく模倣されてきましたが、あの『ベロ・マーク』は数年前には一部の音楽好きにしか通用しないものでした。
しかし、ここ数年はストーンズファンでもなく、特別に音楽好きでもない多くのタレントが堂々とあの『ベロ・マーク』を取り入れているのを目にするようになりました。数年前には考えられない事ですが、少なくともイメージを大切にするタレントの方々が自らの価値を下げるようなものを身に着ける事は考えにくいと思います。


●ツアー、あるいはアルバムのコンセプトと
 ツアー・パンフレットのデザインについて

2014年『The Rolling Stones Announce 14 ON FIRE Tour』のパンフレットデザイン

今回の『14 ON FIRE Asia Pacific Tour』はタイトル通り、炎をイメージさせるカラーのグラデーションを使用したデザインです。「ベロ・マーク」は「14」という数字から飛び出した形になっていますが、近年では珍しくアレンジされていない、オリジナルの状態で使用されていました。
今回のツアーはバックミュージシャンやセットデザインも過去のものと比較すると最低限に抑えられ、全体的に演奏もシンプルなものになっていますが、今回の最もスタンダードな「ベロ・マーク」も、そのベクトルと一致しています。
150万人を越える観客を動員した史上最大のフリーコンサートや、様々なギミックを凝らした演出やセットデザインを行ってきたストーンズが判断した「今、やるべき事」は「シンプルに本質を観せる」という事だったのかもしれません。
パンフレットに使用されている写真も、ライヴの臨場感を伝えるような強く、汗の臭いを感じさせる写真が多い印象を受けました。良くも悪くも洗練は生命力を衰退させます。今回はパッと見としては趣味嗜好に凝った感じはしなかったのですが、それは洗練の逆を狙ったのかもしれません。洗練の逆にあるのはプリミティブであり、プリミティブの意味するところは生命力でしょう。
洗練に向けて突き進んでいく道程にあって大衆文化がポロポロと落としていくプリミティブなもの。
エコロジーを声高に叫ぶのではなく、利便性や豊かさを追いかけて迷走するのでもなく、プリミティブなものを見つめ直す。
今回のストーンズのアンテナの張り方に、なにかハッとさせられました。これは私にとって、大きな収穫の一つと言えます。


『THE ROLLING STONES A BIGGER BANG TOUR』パンフレットデザイン
2006年『THE ROLLING STONES A BIGGER BANG TOUR』のパンフレットデザイン

『A BIGGER BANG TOUR』はツアータイトル通り、マークが爆発しています。爆発していても「ベロ・マーク」が視認出来る状態のバランスが絶妙で、構成も見事だと思います。爆発して四散する表現も洗練されています。素朴に爆発を表現してしまえば、どうにも野暮ったいものになってしまったでしょう。こういった方法を自然に引き出せなくてはプロのデザイナーとは言えませんが、言う程簡単ではないのも現実です。71年のアンディ・ウォーホルを引き合いに出すまでもなく、ストーンズの起用するクリエイターはその時代その時代の超一流のクリエイターであり、簡単か試行錯誤の末かは不明ですが、結果としてこれを引き出せるという信頼があるからこそ、ストーンズに起用されるのです。この優れたイメージはライブ中のビジュアル・エフェクトにも使用されていました。


『THE ROLLING STONES LICKS WORLD TOUR』パンフレットデザイン
2003年『THE ROLLING STONES LICKS WORLD TOUR』のパンフレットデザイン

『LICKS WORLD TOUR』パンフレットの表紙では「ベロ・マーク」は使用されていませんが、真っ赤な唇や女性の下着がかなりのインパクトを持っています。「真っ赤な唇=ストーンズ」という狙いなのか、は定かではありませんが、このビジュアルを眼にした時にあの「ベロ・マーク」を連想されるであろう事は容易に想像ができます。このツアーの前に発売されたアルバム『FORTY LICKS』のジャケットでは、青・黄・赤のグラデーションの「ベロ・マーク」が使用されていて、ツアー用のものは、色とりどりのマークが3つ並んだ状態のものでした。
こういった彩りの華やかさ、とパンフレットの表紙はヒット曲を満載したベストアルバム『FORTY LICKS』に相応しいものであり、そのアルバムをフォローする『LICKS WORLD TOUR』であれば、今回のツアーのような「シンプルに本質を観せる」のはバラエティー感覚に乏しい印象を与えてしまったかもしれません。本来、パンフレットの表紙であれば最重要項目である「ベロ・マーク」を使わなかったのは英断と言えますが、そこに至るまでの決断のプロセスにはデザイナーとして、非常に想像力を掻立てられます。
例えて言うならそれは「iPhoneからリンゴのマークを外そう」という判断と同種の決断であり、「ここはベロ・マークを外そう」という判断は、ストーンズとその周辺のクリエイティブスタッフのセンスが凡百のものではない事の証と言えそうです。
盛る事よりも引き算こそがセンスですが、そのセンスとは「生まれ持ってのもの」というよりも多分に経験と
「普段からどれだけデザインについて考えているか?」という生活態度に育まれるものだと思います。


『THE ROLLING STONES STEEL WHEELS JAPAN TOUR』パンフレットデザイン
1990年『THE ROLLING STONES STEEL WHEELS JAPAN TOUR』のパンフレットデザイン

『THE STEEL WHEELS JAPAN TOUR』は、24年前に初来日した時のものです。「ベロ・マーク」は赤と青にギザギザで分割されたものが使用されていました。さすがに四半世紀程前ともなると、当時はカッコよく見えたアートワークもちょっと古く見えますね。演出やセットデザインも今回のツアーとは対象的に非常に凝っていて、こういった趣向がこの当時の「今、やるべき事」だったのでしょう。セットデザインやアルバムジャケットも全体的に金属的で、全体的にインダストリアルなイメージなのは勿論、『STEEL WHEELS』をフォローするツアーだったからですが、気になるのは『STEEL WHEELS』なのに表紙が飛行機(宇宙船?)のイラストが使用されている事です。ここにどういう決断があったのか、にも大いに関心を覚えます。


●業界のトップランナーで在り続けるという事

ストーンズの活動開始は60年頃からスタートしてから10年間、ロゴマークがありませんでした。
つまりアイコンを決定するというのは企業であれバンドであれ、それだけ重要な事と言えます。
実態も定かではないのにイメージ戦略ばかりに目を配るのではなく、ロゴマークはなくとも揺るぎなく実態はある、という仕事の仕方/在り方はとても素敵ですね。

かなり長い記事となりましたが、最後に最も大切な事を記します。
それは在り方について。
ローリング・ストーンズには名盤と呼ばれるアルバムが多くあります。
中でもあえて一枚、と聞かれたら「メイン・ストリートのならず者(EXILE ON MAIN ST.)」は有力な候補となるでしょう。
このやや古めかしいアルバムタイトルはショービズの世界のトップランナーで在り続けたストーンズの在り方を示しています。
それは、
「決して時代には押し流されない。世間なんか知らないよ、とばかりに趣味的に自分たちの世界だけで生きていくのでもない。あくまでメインストリートで自分らしくふるまうんだ」
という意志です。
日本にはサブ・カルチャーはあっても、カウンター・カルチャーはほとんど存在しないに等しい状態と言えます。あったとしてもメインストリートにその存在感は皆無と言っても良いでしょう。
サブ・カルチャーは趣味です。対してカウンター・カルチャーはプロテストであり、不満の表現です。
そんなカウンター・カルチャーがここまであまり存在感を示してこなかった事は、ある部分において日本がそれなりに良い国だったのだと思います。
私は「花鳥風月を唄うだけ」、「プロテストするだけ」、では不十分であり、ましてや「どちらがより優れている」とは言えないと考えています。
息を呑むような美しいイメージに悩みを忘れてしまう程、没入してしまう事もあれば、時にメインストリートのならず者に勇気づけられる事もあって、デザインを提案する際にもそういった切り替えを適切に行える柔軟さが必要なのではないか。
今回、この記事を書くにあたってパンフレットをめくり、ステージの上で躍動するローリング・ストーンズを思い出しては、そんな事を考えました。


★R's MEMO 最終公演 3月6日(木)のセットリスト
 01. Jumpin’ Jack Flash
 02. You Got Me Rocking
 03. It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)
 04. Tumbling Dice
 05. Ruby Tuesday
 06. Doom And Gloom
 07. Respectable (Fan vote – with Tomoyasu Hotei)
 08. Honky Tonk Women
   - Band Introductions -
 09. Slipping Away (with Keith on lead vocals
            and Mick Taylor joining on guitar)
 10. Before They Make Me Run (with Keith on lead vocals)
 11. Midnight Rambler (with Mick Taylor)
 12. Miss You
 13. Paint It Black
 14. Gimme Shelter
 15. Start Me Up
 16. Sympathy For The Devil
 17. Brown Sugar
   - ENCORE -
 18. You Can’t Always Get What You Want
 19. (I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)


   R.I.P. L'Wren Scott


▶ The Rolling Stones Announce 14 ON FIRE Asia Pacific Tour 


グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM





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2014年1月2日木曜日

2014年 第90回『箱根駅伝』のポスターデザイン:歴史には未来も含まれるというデザインの工夫


2014年・第90回・箱根駅伝・ポスター・デザイン1

『箱根駅伝』の駅貼りポスターは、毎年工夫が凝らされたデザインでとても楽しみにしています。(アートディレクターは、日本テレビ宣伝部の布村順一さんです。)

以前のブログで書きましたが( High Times R: 2012年 箱根駅伝のポスターについて )、『箱根駅伝』のポスターは、今回もとても美しい仕上がりになっていました。とりわけ金色の発色は見事で、『箱根駅伝』のために開発された「HAKONE GOLD」(シルクポスター用インク)が使用されているそうです。

2014年・第90回・箱根駅伝・ポスター・デザイン2

毎回何パターンかのポスターが制作されており、その組み合わせと掲載の仕方によって様々なバリエーションがあるため、掲載場所による見え方の違いも興味深いです。

2014年・第90回・箱根駅伝・ポスター・デザイン3

今年のポスターでは、1920年(大正9年)から歴代の大会の写真が使用されていました。その多くは最終ランナーが、ゴールテープを切る瞬間のものです。戦争の影響で中止された年(1941年・1942年・1944年~1946年)は抜けていますが、それ以外はすべて掲載されています。

今回のポスターのポイントは、歴史です。新年に家族で『箱根駅伝』のテレビ中継を楽しむというのは、この時期の恒例行事のようなものだと思います。「家族の集まるお正月は箱根駅伝」という位置づけを確実なものにするために、多くの世代の人にアピールする。そのために過去のアーカイブ写真を利用して、積み重ねて来た歴史を同時に感じてもらう。家族全員が楽しめる事、お正月の恒例行事としての『箱根駅伝』の歴史をアピールするためにこれは最も無理のない、自然なやり方ではないでしょうか。

2014年・第90回・箱根駅伝・ポスター・デザイン4

今年は90回目となる記念すべき大会です。2014年の部分は、白い空欄となっていました。このポスターが使用される時、まだ優勝校は決まっていません。大量のモノクロ写真(過去)を使いながら、まだ決まっていない未来は白い空欄にする。未来を空欄にする事で、逆説的に歴史を語っているのでしょう。
つまり、箱根駅伝の歴史とは過去の事だけではなく、未来の事も含んでいるのだと思います。こういう一工夫、この白い空欄にこそ、私はデザイナーとして、このポスターを制作された方のインテリジェンスと願いを感じます。この白い空欄を作れるか・作れないか、がプロのデザインであるか、そうではないのか、を分けてしまうと行っても過言ではありません。今回はどの大学が優勝するのか、ここにどの大学の写真が掲載されるのか、期待が高まりますね。


グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM





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以前の『箱根駅伝』の記事はこちら


2014年1月1日水曜日

2014年を迎えて



2014年 DESIGN+SLIM 年賀状 http://designslim.net/


BEST WISHES FOR THE NEW YEAR 2014

新年あけましておめでとうございます!
昨年はお世話になりありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします☆

2014年 元旦




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2013年12月18日水曜日

「ソニー」の93言語対応フォント開発プロジェクト『SST Type Project』:企業イメージに不可欠な「デザイン」と変化する「デザイン」の役割


ソニー「SST」フォント開発・プロジェクト・タイプ・デザイン1
『SST Type Project』特設ウェブサイト

長期間にわたる開発プロジェクトを経て、「ソニー」のオリジナルフォント『SSTフォント』が発表されました。このフォントを初めて見た時、私はデザインクオリティーの高さと、93言語に対応したことに驚かされました。特設サイトでは、開発プロジェクト『SST Type Project』の詳細が明らかになっています。

ウェブサイトには、
商品の小型化が進み、ハードウェアに記載される文字が小さくなる一方で、スマートフォンやタブレットなどディスプレイでの体験が主役に変わりつつあります。こうしたハードウェア上の表記はもちろんコンテンツを快適に楽しむ上で、文字の読みやすさはとても重要です。また、「フォント(書体)」の印象は商品のイメージだけでなく体験そのものに影響を与える大切なデザイン要素。ソニーが提供する商品そのものの価値や体験の質をさらに高めるためには、フォントのデザインにこだわる必要があると考えました。また、ソニー独自のフォントを開発することで、広告やwebサイトだけでなく、店頭でのプロモーション、商品、サービス、取扱説明書に至るまで、ユーザーとのあらゆるタッチポイントでソニーならではの共通の感動体験を提供できるはずです。こうして、ソニー全体で使うためのコーポレートフォントの開発プロジェクトが始動しました。
とあります。

そして実際にフォントをつくるにあたり「ソニー」が目指したのは、「硬質感と可読性の両立」で、「シャープさを残しながらも可読性の高い書体」です。
その結果として、「Helveticaの硬質感」「Frutigerの可読性」という2つのフォントのエッセンスを抽出し、「Frutigerの高い可読性」「Helveticaのようなシャープな骨格」という相反する要素を融合させたそうです。(ちなみに「Helvetica」は、今までソニーが多く使用してきたフォントで、「Frutiger」は、標識用に開発され、高い可読性を持つフォントです。)

今回のフォント開発プロジェクトでの最大のポイントは、93カ国語に対応したオリジナルフォント『SST』をつくることにより、「ユーザー体験そのものをデザインすること」です。『SSTフォント』の完成により、世界中どこでも、どのようなデバイスでも、同一のイメージとメッセージ、ユーザー体験を受け取ることが可能となりました。また、ボーダーレスになったことで、国や言語に左右されない一貫したブランド構築ができることは、このプロジェクト最大のメリットであると言えるでしょう。


Sony Japan | Sony Design | Design Projects | SST Type Project
『Sony Design × Monotype』
福原寛重さん(ソニー株式会社クリエイティブセンター・チーフアートディレクター)と小林章さん(ドイツ モノタイプ社〈前ライノタイプ社〉・タイプディレクター)のインタビュー

「ソニー」サイト内のコンテンツ『デザイン』ページでは、早速このオリジナルフォント『SST』を使ったページが美しくデザインされていました。「クラウドフォント」として使用することで、指定した『SST』が、画像ではなくテキストとして表示されています。(クラウドフォントとは、インターネットを介してフォントを配信し、ウェブブラウザで表示させる仕組みのことです。閲覧する側のデバイスに指定されたフォントが搭載されていなくても、制作側で指定したフォントが表示されるものです。)

今回の「93言語対応のフォントをゼロからつくる『SST Type Project』」が遂行されたことにあたり、どれだけ膨大な時間と手間がかかっているのかは想像に難くなく、ソニーの底力を見せつけられたような思いがしました。主要なデバイスの変化は、今回のフォント開発にとって、大きなきっかけの一つであることは疑いようはありません。

しかし、もう一歩踏み込んでみると、ユーザー体験の優先順位がアップルの躍進以後飛躍的に高まったことや、ユーザー体験そのものが、イメージ構築に大きく関与していることが再発見されているからでしょう。

ユーザー体験が注目されるようになったのは、アップル以前にアマゾンのレビューなどのインターネットがもたらした「クチコミ文化」ではないか、と思います。「その筋の大家」ではなく、一般ユーザーが実際に購買してみての感想が、ソーシャルメディア時代よりもはるか以前に重視されるようになり、企業も宣伝だけではなく、サービスや商品の品質を上げることなどに注力するようになりました。

デザインは確かに企業イメージに大きく影響します。しかし、以前、考えられていた見た目のイメージ作りとは違ったカタチ、問題解決や使用感といった領域において、デザインは企業イメージに影響を及ぼしていくことになりそうです。そしてデザインの失敗は、コミュニケーションの失敗と同義となる時代になっているのかもしれません。

こう考えていくと何故、ソニーが大変な労力を払ってオリジナルフォントを開発しなければならなかったのか、が見えてくると思います。今後この『SSTフォント』が、世界中のソニー製品や広告等でどのようにデザインし表現されるのか、これからのソニーの展開を楽しみに注目していきたいと思います。


グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM





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