『箱根駅伝』の駅貼りポスターは、毎年工夫が凝らされたデザインでとても楽しみにしています。(アートディレクターは、日本テレビ宣伝部の布村順一さんです。)
以前のブログで書きましたが( High Times R: 2012年 箱根駅伝のポスターについて )、『箱根駅伝』のポスターは、今回もとても美しい仕上がりになっていました。とりわけ金色の発色は見事で、『箱根駅伝』のために開発された「HAKONE GOLD」(シルクポスター用インク)が使用されているそうです。
毎回何パターンかのポスターが制作されており、その組み合わせと掲載の仕方によって様々なバリエーションがあるため、掲載場所による見え方の違いも興味深いです。
今年のポスターでは、1920年(大正9年)から歴代の大会の写真が使用されていました。その多くは最終ランナーが、ゴールテープを切る瞬間のものです。戦争の影響で中止された年(1941年・1942年・1944年~1946年)は抜けていますが、それ以外はすべて掲載されています。
今回のポスターのポイントは、歴史です。新年に家族で『箱根駅伝』のテレビ中継を楽しむというのは、この時期の恒例行事のようなものだと思います。「家族の集まるお正月は箱根駅伝」という位置づけを確実なものにするために、多くの世代の人にアピールする。そのために過去のアーカイブ写真を利用して、積み重ねて来た歴史を同時に感じてもらう。家族全員が楽しめる事、お正月の恒例行事としての『箱根駅伝』の歴史をアピールするためにこれは最も無理のない、自然なやり方ではないでしょうか。
今年は90回目となる記念すべき大会です。2014年の部分は、白い空欄となっていました。このポスターが使用される時、まだ優勝校は決まっていません。大量のモノクロ写真(過去)を使いながら、まだ決まっていない未来は白い空欄にする。未来を空欄にする事で、逆説的に歴史を語っているのでしょう。
つまり、箱根駅伝の歴史とは過去の事だけではなく、未来の事も含んでいるのだと思います。こういう一工夫、この白い空欄にこそ、私はデザイナーとして、このポスターを制作された方のインテリジェンスと願いを感じます。この白い空欄を作れるか・作れないか、がプロのデザインであるか、そうではないのか、を分けてしまうと行っても過言ではありません。今回はどの大学が優勝するのか、ここにどの大学の写真が掲載されるのか、期待が高まりますね。
グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM
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