Bunkamura ザ・ミュージアムにて、『レオ・レオニ 絵本のしごと』展を観てきました。会場はそれぞれの絵本のキャラクターとエピソードの特性から、4章に分類され展示されています。印刷された絵本と比較すると原画は発色も良いので、オリジナルはこのような絵だったのかと印象新たにしました。
『レオ・レオニ 絵本のしごと』
第Ⅰ章 個性を生かして ちょっぴりかわり者のはなし
第Ⅱ章 自分は自分 みんなとちがうことは すばらしいこと
第Ⅲ章 自分を見失って よくばりすぎはよくないはなし
第Ⅳ章 知恵と勇気 小さなかしこいゆう者たちのはなし
グラフィックデザイナーとして第一線で活躍していたレオ・レオニが絵本の制作を始めたのは49歳になってからでした。絵本としては教科書に採用されている『スイミー』が有名ですが、アートディレクターとして有名クライアントの広告や雑誌の制作に携わっています。また、画家、彫刻家としても活動していました。
レオ・レオニの絵本は抜群の構成力と色彩の魅力で、心の動きや感情の機微を読者に伝える事に秀でています。そのような効果を獲得している作風は、前衛的なグラフィックデザインの仕事で培われてきた技法や経験がベースにあります。またページをめくる度に感じる心地よい流れとインパクトは、絵本というメディアならではの魅力と言えるでしょう。
特筆すべきはキャラクターが持つ魅力です。
『フレデリック』など、街中で時々見かける可愛らしいレオ・レオニ作品のキャラクターの中には、1960年代に制作されたものもあります。半世紀ほど経った今でも魅力的で色褪せないキャラクターは、世界的にもそれほど多くはないでしょう。
また、多くの人が共感するであろうストーリーも出色の出来です。
レオ・レオニの人生観が反映されたストーリーや、自己、個性を重んじる普遍的な主題は、誰もが自分と重ね合わせてしまいます。社会的背景として、「ベトナム戦争」や「ベルリンの壁崩壊」などに対するメッセージを扱った作品(『あいうえおのき』と『どうするティリー?』)もありますが、世の中や生活が大きく変わっても、ヒトの感情はそれほど大きく変わることはないですからね。
今回、原画を観て強く印象に残ったのは、画材と技法のバリエーションの豊富さです。レオ・レオニは「ストーリーに最も相応しい手法を使おうと努めている」と述べていましたが、油彩、水彩、クレヨン、色鉛筆、鉛筆、パステル、カラーインク、コラージュなど、ストーリーに合わせて最良の選択をする、その引き出しの数が実に豊富なのです。
色鉛筆ひとつをとってみても、細密、線描、クロスハッチングなど、画材の特性を活かして巧みにその技法を使い分けています。伝えたいことをどの技法で表現するのがベストか、常に考え抜いてきた現れともいえるでしょう。そしてそのどれもが、これ以外の選択は考えられないというほどのクオリティで表現されているのです。
今回の展覧会を観て、「キャラクターの魅力」「ストーリーの共感」「絵が持つ力」それらすべてが合わさるのは、奇跡とも言える成功なのではないかと感じました。そのすべてが見事に揃ったからこそ、レオ・レオニの絵本は、世界中で半世紀以上経った今でも、心に深く刻まれ続ける作品となったのでしょう。
同展覧会の図録。アートディレクションは菊地敦己氏。
|
『レオ・レオニ 絵本のしごと』展は、
8/4日(日)まで開催されています。
8/4日(日)まで開催されています。
───────────────────